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2020年12月14日

洪水に強い江西省、長江が育む風光明媚な土地とレアアース産業

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 中国江西省は景徳鎮や廬山といった景勝地で有名ですが、これといった産業に乏しく、ビジネスの観点で注目されることは少ないです。でも実は、一省で中国の行方を大きく左右する地下資源が眠っています。今回はそんな縁の下の力持ち的な江西省の魅力をご紹介したいと思います。

古くは南北貿易の要所

 江西省は、古くは長江・贛江(カンコウ)といった河川や中国最大の淡水湖である鄱陽湖を利用した華北と華南の交易が盛んな地域でした。鄱陽湖は長江と繋がっていて季節によって面積が変化します。つまり天然の堤防機能が備わっているのです。三峡ダム崩壊の危険が叫ばれた2020年夏も、鄱陽湖は観測史上最高の水位を記録しましたが、どうにか洪水を防ぎました。

 江西省は亜熱帯モンスーン気候に属し、降雨量が多くかつ日照時間も長いです。このため農業生産に適し、人口密度も周辺州に比べて高い特徴があります。その割には産業に乏しく、2018年の一人当たりGDPは中国31省・行政区分の中で24位の低位となっています(産業に乏しいので他省のように誤魔化しが効かないという見方もできるかもしれませんが)。

蒋介石も毛沢東も愛した廬山

 廬山(ろざん)という景勝地をご存知でしょうか。長江南岸の九江にある山塊で、有名な避暑地になっています。浄土教発祥の地で、清朝末期に破壊されるまで中国最大の仏教聖地でありました。近代になっても蔣介石が別荘を持ち、1937年にはこの地で抗日講和を発表した場所として知られます。私は2018年の7月に当時住んでいた武漢から訪れました。

 さすがに司馬遷や李白や白居易らが何千もの詩を残したとされる場所だけあって、行くところ行くところで息をのむような絶景が広がっています。歴代の政治家や文化人を唸らせてきた廬山は避暑だけでなくお茶の産地としても有名です。降水量が多く冷涼な気候が茶葉の栽培に適しているようです。このモンスーンがもたらす気候が中国一国を左右する鉱物資源を育む土壌となっていることはあまり知られていません。

モンスーンが作るレアアース工場、江西

 米中経済戦争・尖閣諸島問題などでレアアースが話題に上ることが増えています。レアアースとは希土類15元素の総称で、元素ごとに様々な用途があります。特に、近年問題になっているのはモーターに使う強力な磁石の原料となるネオジウム、ジスプロシウムやイットリウムといった重希土類と呼ばれる元素です。実は、江西省はこの重希土類元素の中国最大=世界最大の生産地なのです。

 大国間の貿易を左右する物質がなぜ江西省で豊富に取れるのか、地質と気候に鍵があります。希土類元素は花崗岩に多く含まれるいます。ですが、花崗岩そのものからこれらの有用元素を抽出するにはコストがかかりすぎます。マサという花崗岩が風化した砂をきいたことがあるでしょうか?砂がさらに粘土状に風化した花崗岩が江西省には広く分布しています。これに塩化アンモニウムなどの薬品をかけると粘土からレアアースが溶け出ます。この方法でレアアースを生産できる国にはベトナムがありますが、レアアースの抽出・分離技術に制約があり、事実上中国が独占的に生産しています。

 2020年12月中国は輸出管理法を施工しました。詳細は不明ですが、今後、特定の品目や特定の外国企業への輸出ができなくなる可能性があります。特定の品目の中に、レアアース原材料が含まれるかが大きな争点となっています。米国も日本もレアアースの供給を中国に大きく依存しています。レアアースの供給不安が起きれば、日本では自動車や電子部品産業、米国では防衛産業が真っ先に影響を受けます。このままではまずいので、日米豪印のクアッド4でレアアースのサプライチェーンを作ろうという動きもあるようです(米・豪は休山中のレアアース鉱山を有し、インドも開発可能なレアアース鉱床があります)。

 地下資源に恵まれた江西省は産業の多角化も進めています。地の利を生かした高速鉄道・高速道路の整備が急ピッチで進められており、また、省都南昌ではハイテク産業開発区にVR(仮想現実)関連ベンチャー企業が集積しているようです。レアアースについても、全国からレアアースを含む廃棄物を集めてリサイクルによるレアアース生産を行うなど、更に競争力を高める施策がとられています。今日は長江が育む江西省の風光明媚な土地と産業についてのお話でした。

江西省を通る高速鉄道及び都市間快速(出典JETRO, 2015)
南昌は華南の中で、決してイケている街ではないが、ネオンの輝きが経済の勢いを主張している

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